『わたくしのビートルズ』本日発売!

2019/4/19 [ BOOK , KONISHI ]

小西さんの3冊目のヴァラエティブック『わたくしのビートルズ 小西康陽のコラム1992-2019』が、ついに本日発売されます!まだ購入を迷っている方は、ぜひ店頭で手に取ってみてくださいね。本のカヴァーをはずしてみると、サプライズがあるかも…?!

出版を記念し、『わたくしのビートルズ』担当編集者のひとり、朝日新聞出版書籍編集部の牧野輝也さんが、レディメイド・ジャーナルのためにエッセイを寄稿してくださいました。制作の裏側が覗ける貴重な内容です!


 とにかく、理想のかたちを求めて、幾度もScrap and Build、Scrap and Buildの繰り返し、なのである。小西康陽氏の創造の過程である。一度は完成形を見ないと判断できないというのももっともだし、完成したかたちが美しくないと思えば、情け容赦なく改変、もしくは破棄する。そう、創造の過程において「情」ほど余計なものはないのだ。
 発売予定日は幾度も変更された。冬が終わり、春のきざしとともに、本書『わたくしのビートルズ』発売をいよいよひとつきほど後に控え、我々編集サイドも少々油断していた。
 なんとなく、完成形が見えた気がしたのだ。これ以上のかたちはないのではないか、と思ってしまっていた。それが最後の打合せのはずであった。

 3月某日。来社された小西氏は、不意打ちで我々に震度7クラスの激震を与える。
「考えたんですけど、ここからさらに20本ほどの文章を入れ込みたい」
 コンテを担当する編集リーダー・小梶氏の顔が歪み、小西氏の前著『ぼくは散歩と雑学が好きだった。』を小梶氏とともに担当した須田氏も唖然として目を剥いている。
「今から!? ……小西さん、無理です。泣きそうです」と小梶氏。平然としているのはレディメイド山崎氏だけである。おそらく山崎氏にとっては、日常的に見慣れた場面に違いない。
 この後の小西氏の言葉を、私は生涯忘れないだろう。
「泣いてください。だって、もの作りって、そういうものだから」

 そのひとことに、小梶氏も須田氏も私も、すとん、と納得してしまった。
 我々は「小西康陽の本」を編集しているのだ。ものを作る上で妥協などあり得ないのだ。無理を承知でまだ見ぬイデアを追い求め、それが見つからなければ見つかるまで模索し続けるのだ。
「いつも、これが最後かもしれない、と思うのです。するとなかなか固められないのです」
 その後も震度3クラスの微震は続きつつも、遂に本書は出来上がった。小西氏の思い入れの濃さと永遠に続くかに思えた編集作業(ひょっとしたら、小西氏は永遠にセレクトをしていたかったかもしれない。私には本書が未だに『創造と破壊の途中経過』のようにも感じられる)を反映し、当初の予定を大幅に超えたページ数と圧倒的な文字量は、21世紀の本とは思えない。

 幾度めかの発売予定日になんとか間に合ったことにほっとしつつ、それでも泣きそうな思いを幾度も味わいながら、もの作りの何たるかを教わった緊張感に満ちた日々が終わってしまったことを、とても寂しく感じ始めている。

朝日新聞出版書籍編集部 牧野輝也


『わたくしのビートルズ』はREADYMADE-SHOPPINGでも販売中。小西さんのサインとお客様のお名前を入れてお届けします。先着で通販オリジナルの特典「栞(Bタイプ)」をプレゼント。特典はなくなり次第、配布終了となります。ご購入はお早めに!