小西康陽のソロ・プロジェクトPIZZICATO ONEが始動します。

2011/3/31 [ CD , KONISHI , NEWS ]

PIZZICATO_ONE_LOGO

 

 

 

 

 

ピチカート・ファイヴが解散してちょうど10年目に当たる本日、2011年3月31日。小西康陽がキャリア初となるソロ・プロジェクトの始動を、発売元のユニバーサル・ミュージックのWEBサイトにて発表いたしました。5月25日には、アルバム『11のとても悲しい歌』が発売されます!

 

レディメイド・ジャーナルをご覧の皆様、小西康陽です。

先ほど、ユニバーサル・ミュージックのウェブサイトに立ち上げたページを既にお読みの方もいらっしゃるかもしれませんが、いよいよソロ・アルバムを発表することになりました。

2010年にビクター・エンターテインメントで「READYMADE V.I.C.」というレーベルを立ち上げ、「ATTRACTIONS!」というリミックス仕事のアンソロジーをリリースした後、「ソロ・アルバム」を作ってください、というオファーを戴いて、すこし考えていたのですが、そのとき突然降りてきたアイデアは、海外の楽曲を海外のヴォーカリストに歌ってもらいカヴァーする、というアイデアでした。

ビクターでは、たぶんダンス・ミュージック的な作品を求めていたのではないか、と考えたこと。契約上の制約から自由になりたいと考えたこと。とにかく、とことん好きなものを作ってみたい、と考えたこと。それで、「READYMADE V.I.C.」はクローズさせて戴くことにして、自分の所属する事務所である、このレディメイド・エンタテインメントで制作することにしました。つまり、エグゼクティヴ・プロデューサーは長谷部千彩です。ディストリビューションをユニバーサルにお願いしたのは、海外のアーティストとの交渉のこともありますが、akikoさんの「リトル・ミス・ジャズ&ジャイヴ」、というアルバムでご一緒した斉藤嘉久ディレクターともう一度とことん仕事をしてみたい、と考えたからでした。

ピチカート、という名前を使っている理由は、あちらのウェブサイトに書いた通りです。海外のアーティストと交渉するのにコニシ、って誰? と言われて、コンタクトが取れないよりも、ずっとマシだと考えました。

だから皆様が抱いている、かつてのピチカート・ファイヴのサウンドとはまったくかけ離れた音楽であるかもしれません。けれども自分では、かつてピチカートの名の下にアルバムを作ったときと似た心境を抱いていました。海外のオーディエンスの反応を意識して作る、という点では福富幸宏さんと「ハッピー・エンド・オブ・ザ・ワールド」を制作したときに近い感じでしたし、ひどくプライヴェイトな作品を作っている、という気分は「プレイボーイ・プレイガール」や「PIZZICATO FIVE」というアルバムを連想させましたし、何より初めてのことをやって戸惑っている、という思いは、かつて「カップルズ」というアルバムをレコーディングしたときと同じものでした。

まだアルバムが完成したわけでもないので、内容についてお話しするのは先送りにしようと思います。ただ、レコーディングの終わり近く、日本を襲った大震災と原発事故には、自分も強いショックを受けたことは、きょう、ここに記しておきたいと思います。かりそめにも平穏であった自分たちの暮らしの上に作っていたこのアルバムが、果たしてこの価値観のすっかり変わってしまった日本において、あるいは世界に通用するのか、それは全く予想もつきません。それはいま、日本で音楽をはじめ、何か表現を職業とする人たちにとって共通の懊悩であると思います。

震災の直後、すぐに行動を起こしたアーティストの方々もいらっしゃいます。沈黙を守っている方もいらっしゃいます。自分の胸の中でも多くの思いが交差しました。ただ、自分はいままで、誰かを励ますための音楽を作ったことは一度もありませんでした。これからも作ることが出来ないと思います。けっきょく自分の作ってきた音楽はすべて自己肯定、それもスケールの小さいもの。ふたたび明日からスタジオに入って完成させる予定のこのソロ・アルバムも、まずは自分を救うために作っているのだ、と、考えています。

もうすこし楽しい話を書きたかったのですが。あ、ジャケット写真は信藤三雄さん。デザインは吉永祐介くん。アルバム・タイトルは「11のとても悲しい歌」というものですが、信藤さんから送られてきたジャケット用の写真を見たとき、「二月の熊」、という題名にすればよかったかな、と考えました。FEBRUARY BEAR。いまからでもタイトルは変更出来るのだろうか。

では、皆様。どうか、わたくしのソロ・アルバム、頭の片隅にでもブックマークをよろしくお願い致します。

PIZZICATO ONEオフィシャルHP